それにしてもこの夏は忙しかったが、圧力鍋でほどよく柔らかくなっている鶏肉をモリモリ食べて乗り切りました。
サイゾーの連載も終わりという事で、イラストのちろみ君と中野ブリックにてささやかな打ち上げ。トリハイをがぶ飲み。酔ったちろみ君がどうしても見たいというので美紀ちゃんを呼び出す。バーに移動し、彼女にはフレッシュジュースを、僕らはキャプテン・モルガンをまたしてもがぶ飲みし(口中が甘い)、引っ越し前のちろみ君家へ。いつも通りがんばれベアーズなどのビデオを見ながら馬鹿話を始発まで。ジャッキー・チェンの話などしていたからか、帰り道、誰もいない早朝の早稲田通りでカンフーの真似事をしていたら、突然角から出てきた女性に見られてしまった。
駅に着き、中野方面へ帰る美紀ちゃんとホームでそれぞれ電車を待っている。どうやら下りの方が早く来るようだ。電車の到着を知らせるアナウンスにかぶせるように、彼女が言った。
「先生、人間はね、抵抗することが美しいのよ。抵抗することが人生なんです。死ぬまで抵抗しましょうよ」
僕は、世間の評判だとか、病気だとか、締め切りだとか、あるいは国家権力の圧力だとか、あらゆるものに最後まで、あきらめずに抵抗して自分を貫いて生きるのが、生物としての人間の美しさだというふうに聞いた。そしてそのとき初めて、レジスタンスという言葉の本当の意味を知ったような気がした。
電車に乗り込んだ彼女は、思いついたように慌ただしくカバンをあさり、中から一冊の文庫本を取り出して僕に渡した。「先生、これとっても面白いわよ、読んでみて」
古今亭志ん生の「なめくじ艦隊」だった。