闇金ウシジマくん 真鍋昌平
連載スタート当初は「闇金業者の手口とそれにハマる人間」を実録風に描くという作品だったのだが、巻を追うごとにウシジマ社長とその業務は徐々に後景に 下がっていって、代わりに、都内でごにょごにょと、金策に翻弄されながら生きずらそうに生きている、エピソードごとに色々と登場するどーにもしようのない 若者たちの描写の比重がどんどん大きくなっており、その筆の冴えはヤンキーとファンシーが点滅しながら同居する彼らの雰囲気を実にリアルに感じさせてくれ る。そういえば、タイトル・ロゴの「ウシジマくん」の「ジ」の点点がハートマークだったりして、最初から何か『ナニワ金誘道』や『ミナミの帝王』とは違っ た気配を持ったマンガだったけれど、「カネの倫理」的な話よりも、「どうしようもなく借金をしてしまう都会人」の在り方にここまではっきり焦点を合わせて くるとは思わなかったので、そして、そういった人を描くために毎回体当たりで努力している感がはっきりと伝わってくるので、特に2巻から5巻目まではスリ リングだ。デッサンや構図の不安定感、また、マンガ表現のシステムに慣れた人にとっては稚拙に見えるかもしれない手描き感あふれる記号処理も、ここでは彼 らの混乱したエモーションを掬い上げる有効な技術となっている。「ゲイくん」シリーズの繊細さ、また、「ギャル汚くん」シリーズで堂々主役を張った、イベ ントサークル代表・22歳フリーター・東京都23区外出身・他のメンバー(高校生のボンボンなど全員年下)から与えられているあだ名は「お父さん」。とい うジュン君のキャラは傑作である。スピリッツで連載継続中。