歯に寒し

また今年も九月二十三日が来てしまった。十三年前の僕はろくに通ってもいなかった大学を中退していて、仕送りもとうに途絶えていたのでなんとかして生活のための基盤をつくらなければならなかった。たまたま目についた近所の電柱の張り紙で、執筆に時間を割けそうなウイークリーマンションの管理人の仕事を見つけたのだが、思いのほか管理人の仕事はたいしたことがなくて、分別ゴミの管理と宅配便の代理受け取りと、ロシア人サーカス団の接待さえきっちりとこなしていればだれからもなにも言われることはなかった。そのかわり朝の九時から夕方の六時まで、ひっきりなしに届く宅配便とロシア人サーカス・メンバーの「鍵を忘れました」攻撃をこなすために管理人室に常駐していなければならず、五分おきに執筆を中断されるような環境でまともな文章が書けるはずもなかった。 そうやってここに集められた多くの文章は書かれた。