■outdoor information 扉文
大谷能生×臼田勤哉
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大谷:こんにちは。今回の巻頭特集は「outdoor information」 と云うことで、近年、都内各地に現われ始めたあたらしいかたちのライブの現場をチェックしながら、そういった場所がどのような音楽シーンを生み出している か、或いは、そのような場所がどういった欲望から生まれているのか、と、まあ、こういったことをレポートしてみたかった訳ですが、取材に回ってから本が出 るまで一年以上かかってしまって、そのあいだに「東風」なんか潰れちゃったと云う(笑)。各スペースの方々にはご迷惑&ご心配おかけしてどうもすいません でした。
えーと、それで、いわゆるライブ・ハウス以外で行われる音楽の現場って云うと、例えばクラブとかレイブ・パーティーだとか、ダンス方面に特化されたもの がまず思い浮かぶ訳ですが、今回取り上げさせて頂いた所はそういった感じとはちょっと違う。ここに何かポイントを設けて、現在の音楽の状況の一側面を浮き 彫りに出来たら、と思っていたのですが、インタビューをまとめて読んで、臼田君、まずどんな感想を持ちましたか?
臼田:共通しているのは、「ライブハウスでは無い」けれどもライブをやるということなんですよね。なんでそうなったのか、という点についてはそれぞれに 違っている点が面白いのですが。まあ、音楽がその場所にあるものとして、そうなったと。で、ダンスミュージックを扱うスタンスも積極的ではなけれども無視 するわけでもないと。
今回、僕はコラムで野田努の「ブラック・マシーン・ミュージック」というダンスミュージックの本について書いたけれど、あれってディスコ-ヒップホップ 以降のブラックミュージックの一部としてのデトロイト・テクノのタフな生い立ちを丁寧にまとめた本なんですよね。歴史化したというか。まあ、これらが90 年代初頭に日本で流通する際には「未来の音楽」になっていたわけですが。で、outdoorってダンスミュージックというコミュニティミュージック的な側 面は無いし、凄腕のプレーヤーがいるわけでもない。これらを纏め上げるような歴史的な流れというのを僕は今のところ想像できない。そういう意味では今のと ころ「未来の音楽」ですね(笑)。
大谷:いやいや、なにか派手な売り文句があれば意外とすぐに大きな流れになって、10年後には一冊の本が書けるくらいになったりして(笑)。そうね、 「outdoor」って言葉を今回採用した意味を手短に話しておくと、これはぼくだけかもしれないんだけど、CDを買って帰って家でそれを聴く、って云う リスニングの手続きを相対化したかった訳ですね。ともかくまず外に出て、都会のフィールド・アスレチックのそこかしこで(笑)いろいろな形でリリースされ ている音楽の姿に触れてみよう、と。勿論、ライブ最高! CDなんてもう古い、みたいな話では全く無くて、音楽が自分の手元までやってくる回路の在り方を いろいろ探ってみる、って感じでした。そのあたりの突っ込みはちょっと足りなくて、もう少しライブ・レポートなんかも含めて丁寧に比較出来れば良かったん だけど……。
臼田:うーん。いまごろ思い出したけれどそんな話したかもしれませんね。うまく出ているかはよくわからないのだけれど。いずれにしろ、リスナーとプレー ヤー、企画者なんかがすごく接近した位置にあるということは、この数年顕著なことだったと思うのだけれど、そうした傾向のドキュメントとしては楽しめるん じゃないかな?
まあ、こういうのを歴史化するのは後世の人に託すとして(笑)、ここ数年の東京も相当変なことになっていますし、エスプレッソを家で読んで楽しむのもい いですが、そこかしこに出かけてって、そこで生まれつつある音楽に触れてみてください、っていうまとめでいいですか? テキトーですいませんがそれではス タート。