東京サーチ&デストロイ (サイゾー 5月)

ミラーボール落下事故があったのは六本木の「トゥーリア」でした! そして落下したのはミラーボールではなく「バリライト」という照明だった?らしい? うむ。

東京サーチ&デストロイ (サイゾー 5月)

何とも物騒なタイトルだが、別に都内各所を爆撃して回るとかそういう話ではないのでご安心を。ここ十年ばかり、人前に出てなんやかややったり、音楽について拙文を書き散らかしたりしているうちに、何時の間にかいろんな所に義理が増えて、それ自体は嬉しいことなんだが、どうも最近フットワークが鈍ってないか? まだまだオレもまとめに入る季節じゃないんだけどな……と思っていたところ、突然サイゾーから「東京のカルチャー・シーンについて何か書きませんか」という連載の依頼が。–これは以前の様に、また当てもなく街中をウロつく良いきっかけだ。ということで、これから毎月、まだ海のものとも山のものとも分からないムーヴメントを捜索し、実際にその現場に足を運んで、焼跡から立ち上る煙の匂いを嗅ぐようなやり方で、東京近辺の文化的状況のレポートをしていこうと思う。
さて、色々考えた末に大学を辞めてから、教育とか管理とかいった行為からきっぱりと手を切った生活を送ってきた訳だが、たまたま菊地成孔氏と一緒に東京大学で講座を持ったことがきっかけで、最近では「ジャズの歴史について喋ってください」というような講師の仕事がぽつぽつ入るようになって来ている。演奏と比べて準備が簡単なので、恐縮しながらも毎回楽しみに引き受けさせて頂いているが、最近では四月二二日に渋谷・宇田川町のcoqdo recordsというレコード屋でおこなったレクチャーが特に面白かった。「ドリル」というイベントで、コンセプトは「クラブ+授業」。ゲスト講師のレクチャーとホストDJによるフロア・タイムがハーフ&ハーフに行なわれ、<21世紀のパーティーピープルは学んで踊るのだ。>という触れ込みである。講義は何をやってもいいですよ、という話だったので(実はこれが一番困るのだが)、大友良英氏が二〇〇一年に作曲した『ポータブルオーケストラ・家電編』という作品を皆に演奏して貰うことにした。これはON/OFFによって何らかの音が出る家電(電動ヒゲ剃りやドライヤー、携帯ゲーム機など)を「楽器」と見なし、あるルールに従って各自がそれを「演奏」するというかなり実験的な作品で、演奏者には音とその構造への関心と、こういったある種馬鹿馬鹿しい作業に真面目に付き合う度量が求められる。きちんとした演奏になるかな? と心配だったのだが、演奏が始まってみるとお客さんも含めて皆素晴らしい集中力で、宇田川町という巨大なレコード分配所の片隅に、実に味わい深い静寂を作り出すことが出来た。最近の学生は随分と許容力があるな。オレの若い頃だったらこの試みは無理だったんじゃないか。
毒を喰らわば皿まで、という訳ではないが、「自主講座」ときたら次は「デモ」だろう。丁度その「ドリル」の次の日、早稲田で学園闘争の支援集会があるというので、いい機会だから野次馬として見に行くことにした。が、これは結局、学内の問題だけに収まってしまう、大学のあり方について論議する場に過ぎない様だったので、拍子抜けして途中退出。小奇麗に建て直し中の大学構内を散歩し、大隈講堂前でしばらく、そういや、ウチの両親は「うたごえ喫茶」で知り合ったとか言ってたな、と、往時に思いを馳せてみた。サーチ&デストロイ。