美術手帳2003年?

Dill 『wyhiwyg』インタビュー

パソコンに取り込んで適当な処理をおこなえば、身のまわりで鳴っているどんな音からも音楽を作り出せるようになった現在、ぼくたちは殆どお菓子の家に住ん でいるみたいなものだけれど、ミュージシャンはやっぱり、そんな中からまだ誰も食べたことのない響きを探し出して、これとしか言いようがない一品に仕上げ る腕前を持っている。先日FlyrecからリリースされたDillの『wyhiwyg』(読みは「ウィヒウィグ」ね)は、フレーズに付けられた影と滲みの 階調が実に魅力的な、彼のファースト・アルバムである。「アルバムを出して、えーと、昨日までは大阪で『発条ト』っていうダンス・カンパニーの音楽をやっ ていました。90時間くらいかけたワークショップ作品の公演だったんですけど、各ダンサーがヴィデオで録ってきた音を編集したり、練習の前にワークショッ プ生がいたずらで弾いてたピアノの音があったんで、それを取り込んで使ったりしました。」普段使っている機材は「普通のMacとCuBASE」という Dill.。今回のアルバムではメモリーが足りなくて大変だったそうだ。「でも、例えばMaxみたいなソフトは一切使っていないので、ほんとただ単に容量 が足りなくて手間だったってことですね。パソコンの処理能力ってかなり上がってますから、サウンド・ファイルをプロセスするだけっていうやり方でも結構面 白かったりもするんだけど、やっぱそんな簡単な方法だと自分の作りたい音って録れないんで。ライブでも単にパソコン上の音を流すんじゃなくて、チェロやコ ントラバスを入れたり、あとロックバンド的な編成でやったりとか、まあ色々やってみているんで、アルバムを気に入ってくれた人は是非ライブにも足を運んで みてください。」