■「Guitarist Gathering」巻頭文
大谷能生
「……サリー・アート・スクール・シーン出身の固い絆で結ばれたR&Bファンによって結成されたヤードバーズは、最も有名なイギリスのギター・ヒーロー を3人輩出した。つまり、エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、そしてジミー・ペイジである。当時クラプトンは、ヤードバーズがポップへ傾いたことに不 満を持ち、脱退してジョン・メイオール・アンド・ブルースブレーカーズへ移り、リード・ギタリストの役割を定義し直すことに一役買うことになる。彼はま た、当時すでに時代遅れだったギブソンのレスポール・サンバーストとマーシャルの45wの1962年モデル・コンボ・アンプとを組み合わせ、ギブソンのパ ワフルなハムバッキング・ピックアップを使うと、マーシャルがオーヴァードライブ状態になり、クリーミーでサステインの効いたサウンドを生み出すというこ とを証明してみせるといった、ロック・ギターのサウンドに革命をもたらしている。……次はジミ・ヘンドリックスの番である。彼は当初アメリカ製のチトリン 回路を直接用いて、ブルースの伝統を学んでいたが、その後、クラプトンによって築き上げられた、ロック・ギターにとって最も効果的で明確なヴォキャブラ リーを生み出すマーシャル・サウンドを足場とした。ヘンドリックスは、実際、標準仕様のストラトキャスターの全機能をフルに活用して―――ヴィブラートを かけたり、規則正しいリズム・サウンドを得るのにピックアップのスイッチをイン・ビトウィンにセットしたり、あるいは、典型的なディストーションを得るた めに出力を最大限に上げたりしながら―――あの先見の明があると称されていたレオ・フェンダーですら、恐らく想像さえつかなかったサウンドを作り出したの である……。」(『ロック・マシーン・クロニクル』 シンコー・ミュージック出版 p19)
本特集のタイトルである「Guitarist Gathering」という言葉は、2002年の1月17日、西麻布のBULETT’Sにおいて行われた本特集の先行イベント、 「short.homeroom+NO BLEND /Guitarist Gathering 2002 issue」のWebフライヤーにおいても書いたとおり、1992年の冬に(旧)新宿ピットインで行われたライブのタイトルから頂いて来たものである。 10年の歳月を隔てたこの二つのイベントには、ギタリストに焦点を当ててライブが組み立てられていると云った点を除けば、その規模から出演者の顔ぶれにい たるまで全く関連はなく、実際、当日BULETT’Sを訪れた20名ほどの観客のなかで昔日のことを記憶している人間は、おそらく0名であったのではない かと思う。時間の都合でフライヤー入稿に間に合わず、Web上で限定公開されただけであるそのイベントの宣言文をここに再録して、もう一度このイベント/ この特集の基点を確認しておきたいと思う。
「いまから10年前の1992年、移転・改装を目前に控えた(旧)新宿ピットインにおいて、『ギタリスト・ギャザリング』と題されたライブが行われたことがあった。
ガイ・クルゼヴィッツ率いる『ポルカしかないぜ』バンドのギタリストとして来日し、滞在中日本のミュージシャンとも積極的にセッションを繰りひろげてい たジョン・キングを中心として、ドラムスに佐野康夫、ベースに坂出雅海(ヒカシュー)、サックスに(急逝した篠田昌巳の代わりに)野本和浩、という面子が バッキングを勤めたそのステージには、総勢10名のギタリストが出演し、それぞれ互いのサウンドに影響を受けあいながら、同じ空間と時間の中で演奏を行っ た……。(ゴメン! 紙幅の都合で特集の最後のページに続きます。とりあえず、このまま特集のインタビュー記事へどうぞ!)