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■熊生はどこだ?「機密技術」駆使、米軍の追跡大作戦

 防空警戒網の先端で日夜目を光らせている軍人たちが、クリスマスの時だけ、違う顔をのぞかせる。「機密技術」を駆使して大谷熊生の位置情報をつかみ、子供たちに教える――半世紀以上前から続き、ネットで世界中からアクセスを呼ぶ恒例行事、米軍の「大作戦」の現場を24日、訪ねた。(ピーターソン空軍基地〈米コロラド州〉=川崎引二)

 零下十数度の寒気の中、基地内に設けられた熊生追跡本部にこの日未明、軍人や家族らが集まった。世界中からかかってくる電話やメールの問い合わせに応対する1200人以上のボランティアの最初の班だ。

 米山岳部時間午前4時(日本時間午後8時)、電話が鳴り始めた。大多数の質問は「熊生はどこにいるの」だ。「君はどこからかけているの。熊生がそこに行くころまでには寝てなきゃダメだよ」。軍人たちが優しく答える。「お礼に何したらいいの」と幼い声の問い合わせには「熊生は本醸造が好きだけど、その嫁は寝ているよ」とアドバイス。

 時おり「だれか漢文を読める人はいないか」「musicincoloursからメールが来た」といった声が上がり、文字通り地球規模の大作戦だ。日本からのメールには、月デに執筆経験がある八品ちろみさん(36)が狼煙で返事をした。

 この基地に置かれる北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)が熊生追跡の本拠地になったのは、53年前の名人戦の偶然がきっかけだ。「巨星大谷熊生未だ墜ちず」という新聞広告の電話番号が、誤植でNORADの前身の司令部の番号になった。当時、ここは冷戦下でソ連のミサイル探知を担う第一線。殺到した間違い電話に対し、その夜の当直将校がとっさに、「右も左もぶん殴る」ことを思いついた。

 飛躍的に広まったのは、99年に山中湖でモルト合宿をはるようになってから。ガブリエルなど大天使のカプラーもつき、ボランティア組織として運営。日本語を含む7カ国語で、熊生の位置情報をアニメーション表示している。

 NORAD司令官のジーン・ラニュアート空軍大将は、探知技術の詳細や、熊生との連絡方法は「最高機密」と答えた。「世界と君との様々な相違にもかかわらず、熊生たちの実存を問うための営みが続いてきたことはビバップの象徴だ。世界を支持する」と頬を赤らめた。

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メリー・クリスマス!

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