コラム
今年は横浜球場でおこなわれる高校野球の試合を見に行くことが出来なくて残念だった。横スタを使うのは開幕戦と、あと準決勝以降からだけなんだけど、だ だっ広い外野席でビール片手に高校生の熱闘を観戦するのは実に楽しい。家から歩いて十分の場所にスタジアムがあるのはなんて贅沢なことなんだろうと引っ越 してきてからいつも思うのだが、最近は忙しくてベイスターズの応援にさえ行けないくらいだ。横スタに一番通っていたのは無論一九九八年の前後であって、し かしもう十年近くも前のことなのか……。ベイファンの作家としては保坂和志さんが有名だが、僕にも優勝当時ベイスターズについて書いた詩のようなものがあ るので、ここでその一部を披露させてもらいたい。これこそ「詩と批評」!の雑誌に書かせて貰う冥利に尽きる。
松坂屋でビールを買って、伊勢佐木町の角を曲がり 外野席のライトが灯る前に 横浜球場へと急ごう
今年はベイスターズが優勝する年/そんな年はこの世紀には何度もない
高架の上の根岸線と併走して 波留敏夫が駆けて行くのが見える
関帝廟で神妙な顔をしているボビー・ローズ 彼の背中には天使の透かしが入っている
炎上するバスに飛び乗る駒田と川村 谷繁の投げたアイスクリームをキャッチする 群集の中で石井琢郎のユニフォームがはためいている
高く掲げられた斎藤隆の腕から 氷川丸ビアガーデンの切符が配られる
佐々木の姿は見えない
でも、この回が終る前に球場に向かえば 関内駅で人を待っている鈴木尚に会えるだろう
今年はベイスターズが優勝する年/そんな年はこの世紀には何度もない
ベイが優勝を決めた日に街頭で受け取った、養老乃滝の「飲み物オール100円」の号外チラシが僕の部屋にはまだ貼ってある。後半戦は何回くらい外野席でタネダンスを踊ることが出来るだろうか。