SHOPに動きがありましたよ。まず『日本の電子音楽』(川崎弘二著、大谷能生協力)2冊だけですが再入荷しました。まだオマケありますぞ。どうやらAmazonでも品切で、セコハンプレミアつきはじめてる模様?です。
http://www.amazon.co.jp/gp/offer-listing/4750002704
名古屋Tokuzoに置きっぱなしにしてたfeep / 「The Great Curve」を引き上げてきました。mao社長の許可が出たのでこちらで販売いたします。久々に聴いたらかなり格好良かった!
あと、Improvesed Music From Japan 鈴木美幸さんにお願いして、大谷が編集した「Improvesed Music From Japan EXTRA 2003」のストックを送ってもらいました。2000年代初頭の若手インプロヴァイザー特集ということで、多くのインタビューとCD2枚ついて¥2000。若手じゃないですが、山内桂さんのソロ演奏も収録されてます。
よろしゅうに。
さて。
http://d.hatena.ne.jp/musicincolours/20080120
ご意見ありがとうございます。
「貧しい音楽」に収録された「『複製技術時代における芸術』へのノート」は、1999年8月に出版された「エスプレッソ8号 特集:Guitar me pop」へ寄稿するために書かれたもので、当初同人の希望は、前号に掲載された「音楽における抽象と具象1」という原稿の続き、というか、そこで広げられていたトピックの絞りを狭めて、さらに突っ込んだかたちで書いて欲しい、というものでした。その意見に沿って、確か最初は絵画と映画とヴィデオ作品とマンガ作品の、それぞれのメディア的特徴の違いについて書いてみたように思うんですが、その時点では資料不足もあって、あんまり面白い原稿にはなりそうになかった。うーん困ったなあと思いながら締め切りを先延ばしにしていたところ、たまたま古本屋で、岩波文庫に入った「ベンヤミンの仕事2 ボードレール他5編」を拾い、晶文社版の著作集はかなり昔に手放して生活費に当ててしまっていたため、随分久しぶりにベンヤミンの邦訳を読むことになった訳ですが、以前あれほど熱心に読み、大体その内容は分かっていると思っていたことが大間違い。簡単には要約出来ない細部がたくさん目に入って来て、これはせっかくだから少し丁寧にメモを取りながら読んでいこう、と、野村修氏の訳を一文一文、紙に目をこすりつけるようにして書き写しながら、逐語的にこれから発展させられそうなアイディアをその横にノートしていったのが、あの文章になります。
その時心がけていたのは、先行者の解説や出来合いのトピックになるべく頼らず、まず自分の目でベンヤミンのこの文章の後を正確に辿ってみる。細部を端折ることなくまずこの文章の全体をプレパラートの上に載せて観察し、そうやって後に、他の読み手が、その文章のどの部分を重要視し、この論文をどのように要約・解説しているのかを確認してみよう、ということでした。
そうやって一文一文を書き移しながらベンヤミンの文章を読んでいくのは非常に楽しい作業で、後半に行くに従って、ノートを付けなくても、本文を書き移しているだけで大分見通しが良くなり、もっともらしい解説を書かなくてもすむようになりました。せっかくだからと思い、多少「エスプレッソ」寄りにノートの内容を整理し、清書して、読書のドキュメントとして、約束の論考の代わりにエスプレッソに掲載させてもらったのがあの原稿だ、という訳です。
『貧しい音楽』を編む際、「エスプレッソ」時代の原稿を再録するという章の中にこの原稿を載せるかどうかについては、編集者と若干の話合いがもたれました。結局収録することになったのは、出来るだけさまざまフォームで書かれた文章を載せたい、という両者の基本的な希望と、エスプレッソという音楽批評誌にはこういった原稿も載っていました、ということを記録として残しておきたい、という気持ちが強かったからです。
『貧しい音楽』に掲載されている文章は、すべて、一般の読者に広く読まれることを想定して書かれています。また、それらの文章は、そのテーマ毎に、そのテーマに相応しい文体とフォームとを発明するところから、書き進める為の作業がスタートしています。また、音楽を語るに当たって、現代思想的なタームを持ち出して解説した気にならない、ということも徹底させています。
これらはすべて、「読書という楽しみ」に対する配慮から生まれてきた姿勢です。
極端に言うならば、書かれている文章の内容が、その形式から切り離して引用することが難しい――簡単には人の役に立たないような内容のものを書くことが、この本における一つの目標となっています。なので、もし、『貧しい音楽』に書かれている事柄を使って、アカデミズムに向けた文章を書こうとする方がこれからいらっしゃった場合、これは学内で認められるような形式で書かれたものではない、ということを充分に意識された上でなされるよう、お気を付けて。こうした原稿は学校ではリジェクトですよ。
『貧しい音楽』には、テーマは大体一緒ですが、さまざまな形式・文体による文章が収められています。読者のみなさんがそれぞれ、噛み付きやすい、咀嚼しやすい所から楽しんで読んで頂ければ幸いです。
お勉強頑張ってください。