藤原大輔 「Jazzic Anomaly」インタビュー
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初リーダー・アルバム「白と黒にある4つの色」をリリースした後、アンダーグラウンド・レジスタンス陣との競演や、濱村昌子(pf)、井野信義 (bass)、つの犬(ds)という強力なメンバーを率いたアコースティック・セッション・シリーズなど、快調に活動を続けてきた藤原大輔が、7月10日 に二枚目のリーダー・アルバムを発表する。前作同様、ボストン時代からの盟友であるミヤモト・タカナ(piano,keys)とトリヤマ・タケアキ (drums,per)を迎えて作られたそのアルバム――「Jazzic Anomaly」の中には、これまで彼が自分の音楽に取り込んできたさまざまな要素――リズム・マシーンによる打ち込みのバック・トラック、モーダルな和 声の感覚、そして勿論、個性的なサクソフォン・サウンドと即興演奏――が、きわめて有機的な形で含まれている。
「今回のアルバムは、ボストン時代にミヤモトとトリヤマとでやっていたことと、それ以後、例えばAupeってユニットで昨年から試みているリズムとグルー ヴの実験や、エレクトロニクスでやってきたことなんかを全部ミックスさせて、いま藤原大輔がやっている音楽の集大成的なものが作りたい、と。そういう意図 でスタートしました。あと、去年アルバムを作った後このメンバーでツアーをして、その時にもっと色々なイメージというか、彼らをこういった舞台の上に乗せ たら凄く似合うだろう、とか、また逆に、僕が用意したシチュエーションでは彼らに思ったようにプレイしてもらえなかったりとか、そういったアイディアとか 反省点を元にして作っていますね。」なるほど、今回のキーワードは「映画的なアルバム」ということだが、藤原がレコーディングの際に用意した各曲のバッ ク・トラックは、その中で共演者が自由に振舞い、即興的にセリフをやりとり出来るような舞台装置の役割を担っているのだ。出演者が一番映えるようなロケー ションをハンティングし、カメラのアングルを決め、脚本を仕上げる……。「そういう文脈で言うならば、今回のアルバムあまりセリフの指定とか演技の指導と かがない、長回しのカメラの前で各人自然に振舞ってもらう、みたいな感じで、プレイヤーが自分でイメージを膨らませてストーリーを作ってゆくようなやりか たで録音しました。彼等のイマジネーションを出来るだけ邪魔しないように心がけて、例えば、いまのシーンは自分が思ってたイメージとは随分違うことになっ てるなあ、と思っても、演奏を止めて説明する、みたいなことはやらないで、その場で起きている事を優先させる。そういう時の方がむしろフレッシュなサウン ドになって、特にアルバム中のrippleって曲はそういったハプニングが上手く作用していると思います。現場で起きていることを最大限に取り込んでい くってやりかたで、かなりジャズ的な方向だと思うんですが、きちんと演出して、がっちりとしたセリフと舞台を用意して、それを演技してもらう。そうした表 現でもミヤモトとトリヤマは素晴らしいんで、そういったものにもチャレンジしてみたいですね。コッポラだって『地獄の黙示録』だけじゃなくて色々な映画を 撮っている訳ですし。」